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KEIMEN岡田章吾:畑仕事のリアルから導き出す、機能と服作り
農業に必要な機能性と街でも映えるデザイン性を両立させた日本発のブランドである「KEIMEN(カイメン)」が、空調服の技術を搭載した猛暑対策のアイテムをリリースした。
モデルエージェンシーの代表である人物が、なぜ自ら畑を耕し、現場の課題に特化したウエ アの開発に踏み込んだのだろうか。
この記事では、KEIMENのDirectorである岡田章吾氏に、ブランド設立の経緯から、本格的な畑仕事と日常の双方に対応するプロダクト開発のプロセスを聞いた。
農業のサイエンスに魅了された日々
モデルエージェンシー「VELBED.(ベルベッド.)」の代表を務める岡田氏は、2019年に神奈川県の体験農園で小さな区画を借りたことから土に触れ始めた。当初は種をまけば育つものと軽く考えていたが、土壌や環境の条件が揃わなければ作物は思うように成長しない。農業の奥深さに気づいた彼は、1年間農業の学校に通い、本格的に栽培の基礎を学ぶ決意をした。「1年間農業の学校に通ったのですが、そこで科学の奥深さに触れ、それがかなり面白かったんです。栽培自体にハマっちゃって。そのタイミングでコロナ禍になったこともあり、とにかく時間があったので、毎日畑に行ってその楽しさを知る期間になりました」
この没頭は、岡田氏を本格的な生産の道へと導いていく。2021年頃には山梨県道志村で1.5反という広大な畑を借り、地元の組合である「百姓会」を通して収穫した野菜を販売するまでになった。地元のキャンプ場から落ち葉を集めて腐葉土にしたり、廃棄物処理場から野菜くずの堆肥を調達したりと、土作りからこだわる徹底した姿勢での取り組みが始まった。
たとえば、週に1回のペースで道志村に通い、管理しきれない野菜を避けて年間スケジュールを立てるなど、自身のライフスタイルに合った栽培のサイクルを見出している。

畑がそのままデザインのテストフィールドに
農業にのめり込む一方で、当時の岡田氏はジャージ姿で作業をしており、気分の上がるウエアがないことに不満を抱いていた。従来の農作業着は安価なワークウエアなどで代用する側面が強く、ファッション性を求める選択肢が限られていたのだ。さらに、長靴に裾を入れやすくする工夫や、下を向いた際に首の後ろが焼けない日よけなど、現場ならではの必要な機能が彼の中で徐々に形になり始める。
そんな折、アパレル会社の知人から声をかけられたことをきっかけに、2021年の春にブランド「KEIMEN」を立ち上げた。ブランド名には、ドイツ語で「発芽」という意味が込められている。
「まずファーストサンプルを作って、それを畑でフィールドチェックしてからセカンドを上げます。たとえば、カーゴパンツのポケットの位置が少し低くて、入れた携帯電話が落ちてしまったら、少し高くするなど、そういう微調整を畑でチェックしながらデザインを進めています」
アパレルの一般的なサンプルチェックとは異なり、岡田氏は自ら試作品を身につけて実際の農作業での動きをテストする。かがんだ際にポケットから物が落ちないかといった、現場でしか気づけない細かな不具合を修正し、次のサンプルへと反映させていく独自のプロダクト開発手法が確立された。
空調服の技術を取り入れたAir fan T-shirts
近年の過酷な猛暑での農作業において、熱中症対策は避けられない課題である。そこでKEIMENは、スタイリストの望月 唯氏が手がけるブランド「RICO airfan(リコエアファン)」と協業し、猛暑対策として建築現場などで導入が進む「株式会社空調服」の技術を取り入れた「Air fan T-shirts 」を発売した。通常の空調服は現場の安全面から長袖やベストが主流だが、KEIMENはあえて半袖のTシャツ型を選択している。
「半袖のTシャツがいいのは、腕から風が抜けることです。空調服の特徴の1つとして、風が抜けて肌に風があたる箇所が涼しいので、腕周りも首周りも涼しくなるのが、このアイテムの一番の特徴かもしれません」
生地素材には東レの撥水性と速乾性を持つポリエステルを採用し、軽やかでサラサラとした着心地を実現している。襟元のストラップで隙間を作り、後頭部へ風が抜けることで体温を下げる工夫も施された。
左ポケット内でバッテリー操作が完結し、一番弱い風量設定で約20時間稼働するため、丸一 日の作業でも快適さを維持できる。小型のバッテリーを採用しており、作業中に重さが気にならない設計になっている。
バックには岡田氏が道志村で借りている畑の等高線をモチーフにしたグラフィックが配され、デザイン性の高さも担保している。農業だけでなく、夏の自転車通勤やキャンプなど、都市生活やアクティビティでも機能するプロダクトである。



現場の課題から進化し続けるプロダクト
初期から展開している定番アイテムも、畑での経験をもとに毎シーズンアップデートを重ねている。「Hat」は下を向いて作業する際の首の過度な日焼けを防ぐため、通常より広めの範囲をカバーする形状となっている。素材には撥水性のあるナイロンを使用し、ツバ部分にワイヤーを入れることで雨の日の視界を確保した。内側のスベリ部分には東レの吸水速乾と防臭効果のある生地を用い、汗をかいても快適さを保つベンチレーション機能も備えている。さらに、あご紐や後部のループでサイズの調整もでき、細部まで利便性の追求を怠らない 。



加えて、フルーツオブザルームのコットンのボディに吸水速乾の加工を施した「Vegetable T-shirts」も販売し、都市と農の現場をシームレスにつなぐラインナップを展開している。
「Tシャツのバックプリントに書かれている『GREEN THUMB GEEKS』というのは、親指が緑になるくらい植物いじりをしている人のことで、植物オタクや畑オタクみたいな意味です。フロントの『To and fro』は、医師で解剖学者の養老孟司さんとお話しした際に『都市と田舎を参勤交代しなさい』といわれたことから、行ったり来たりという意味で入れました」
グラフィックに込められたメッセージには、都市と田舎を行き来しながら生活を営む、岡田氏自身のスタンスがそのまま表現されている。


KEIMENは単なるアパレルブランドではなく一つのプロジェクト
現在、岡田氏の活動は服作りにとどまらない。農業を多角的に掘り下げるための冊子「GREEN THUMB BY KEIMEN」を自主制作し、過去には「雷」や「POTATO(じゃがいも)」をテーマに取り上げてきた。雷と豊作の関係を科学的に研究する九州大学の教授に取材するなど、日本の歴史や科学的な視点から農業の深淵に迫っている。直近に発行された第7号では「風呂」をテーマにし、農業を趣味とする片岡鶴太郎氏への取材も敢行した。また、編集者の山若マサヤ氏とともに制作するPodcast番組「都会の農民ラジオ 別冊KEIMEN『緑の親指』」を毎週水曜日に配信するなど、農を中心とした発信を絶え間なく続けている。
岡田氏にとってKEIMENは単なるアパレルブランドではなく、畑から枝分かれして広がる一つのプロジェクトだ。週に1回、都会を離れて自然に触れてリフレッシュする時間があるからこそ、都市での生活や事業も健全なメンタリティで続けられるのだという。
畑という現場のリアルな感覚を持ち続けることで、独自のアイディアが生まれてくる。農とファッションを交差させる彼の活動は、今後も畑という原点から独自のプロダクトとコミュニティを生み出していくだろう。

PROFILE

岡田 章吾(おかだ しょうご)
KEIMEN Director
2021年KEIMEN設立。自身が代表を務めるモデルエージェンシー「VELBED.」の農園や、山梨県道志村の畑を拠点にさまざまな農作物を育てる。被災地支援活動や、特別支援学校でのボランティアなども行う。









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