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自動車製造工程で生まれるレザー廃材がバッグに生まれ変わる──トヨタアップサイクルの新プレミアムライン「Tsugi-Craft」

2025.11.25
この度、日本を代表するトヨタ自動車株式会社が、自動車の製造過程において避けられない廃棄物の問題に対して新たな取り組みを始めた。これまで同社は「TOYOTA UPCYCLE(トヨタ アップサイクル)」という名でアップサイクルを行ってきたが、今回さらなる一歩として、本革シートの端材を利用して、デザイン性の高いプロダクトを生み出すプレミアムラインを設けた。
「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE(ツギクラフト バイ トヨタ アップサイクル)」と名付けられたラインは、単なる廃棄物削減に留まらず、企業のものづくりとサステナビリティへの挑戦でもあるという。
そこで、同プロジェクトのリーダーである中村慶至さんと同デザイナーの加藤舞さんに、この取り組みが目指す地点を取材してきた。

PROFILE

中村 慶至(なかむら のりゆき)

新事業企画部事業開発室 トヨタアップサイクルプロジェクトオーナー

PROFILE

加藤 舞(かとう まい)

トヨタ自動車カラー&感性デザイン部アドバンスドCMFXグループマネージャー

車両用素材の高機能性に注目

自動車の部品は大小さまざま。いずれも貴重な資源だ
トヨタ自動車株式会社は2021年7月に「TOYOTA UPCYCLE」のプロジェクトを開始した。
このプロジェクトが始まる前から、各工場は自動車の生産過程で生じる廃材のリサイクルやリユースを行っていた。だが、シートベルトやシートの端材などは複数素材の組み合わせやコーティングが施されており、その特性からリサイクルが難しく、断片的に再利用されるに留まっていた。
「自動車に使われている部品は素材は非常に耐久性が高く、そのまま廃棄するのはもったいない。そこで廃材や端材のアップサイクルを新事業として展開できないかということで、新たなチームが発足しました」(中村)
これまでの単発的なリサイクルではなく、日々断続的に生まれる処理が困難な素材を、いかにして資源として捉え直せるか。それが「TOYOTA UPCYCLE」の原点にあった。

確かな手応えとプレミアムラインへの挑戦

染料加工によって独特な風合いが生まれたナイロンを使用した「Upcycle Gear(アップサイクル ギア)」
「TOYOTA UPCYCLE」は「モッタイナイ」を「もっといい」へをテーマに、端材や廃材をステーショナリーやアウトドアギアへ生まれ変わらせることで、新たな付加価値を生み出している。
少しでも傷やシワがあるとシートに使えなかった牛革、カッティングの際に付けられたマーキング、ナイロンを染色する際に避けられない生地の収縮さえも、素材の持つ固有の価値とみなし、唯一無二のアイテムを生み出してきた。
端材のマーキングやシワも新たな価値として生まれ変わる
「ステーショナリーは、サステナブルなアイテムを自分の生活の中に取り入れてみようという考えを持つ方に共感され、ギアの方はファッションアイテムとして普段使いされている印象があり、さまざまなお客様に手に取っていただけています」(加藤)
各商品に応じて顧客層が異なった点は、同社にとってプラスに働いた。アップサイクルの商品の需要の高さを確認できただけでなく、トヨタ自動車の顧客以外にも広くアプローチできる可能性が開けたという。
「私たちが普段接点を持たないお客様にも、このアップサイクルの商品や考え方を広げていきたいと考えています。そのため、今まで到達できなかった領域に踏み込むという意味も込めて、プレミアムというラインを用意しました」(中村)
アップサイクルの必要性は誰もが気づいているものの、そのプロセスのために商品が高価になってしまうのもまた事実。しかしプレミアムと呼ぶにふさわしい細部へのこだわりを見直し、またこの活動が次世代へと繋がる価値を考えれば、価格以上のものを伝えていけるという。

日常に落とし込む「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」

次(ツギ)の世代へと繋いでいくコンセプトをそのままブランド名にした「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」
新たな客層へのアプローチのため、特に20代から30代の男女をターゲットとして、日常でもアップサイクルを実感できるレザーバッグが選ばれた。このプロジェクトは「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」と名付けられたが、「Tsugi」という言葉には多くの思いが込められている。
「ここには“ツギの技、ツギの人、ツギの未来”という意味が込められています。新たな人との出会いや、循環型の社会を繋いでいくという思いですね。その中でも強調したのが、ツギの技です。端材や廃材という一つひとつの素材を繋ぎ合わせていくパッチワーク技術です。
新しい素材や材料を注ぎ込んでいくのではなく、私たちが昔からものを大切にしてきた精神とその技術である継ぎ接ぎの技を継承し、その価値をあらためてお客様に感じてほしいと思っています」(中村)
アップサイクルを日常に取り込み、そして次世代へと繋いでいく思いが込められたバッグ。それはブランドの名称だけでなく、バッグの形そのものにも表れている。

即興ジャズのようなインスピレーション

商品名の番号とパッチワークの柄が一致する仕掛けが隠されている
「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」では、高い付加価値を追求するために、同社が展開するブランドの中でも高級ラインに位置する「LEXUS(レクサス)」の廃材を利用している。特に、厳しい品質基準がある車の部品は、そもそも素材としてのポテンシャルが非常に高い。
「車の走行性能は車重に拠るところが大きいため、シートのレザーは軽量に設計されています。そのうえ、夏場と冬場の気温の高低差でもへたらず、そして10年、15年という長期にわたって使用し続けられる耐久性があります」(加藤)
こうして類を見ない自動車のレザーを使用したバッグは、そのブランド名にも通じるようなパッチワーク柄となっており、型番に応じてそのパッチ数が変化するという面白い試みがなされている。ここには思いがけない発見があったようだ。
「縫製工場で打ち合わせをしていくなかで、ふとひとつのパターンが降ってきたんですね。それが9つの生地を配置したパッチワーク柄でした。そこからは、まるでジャズの即興セッションのようにイメージが広がっていきました」(加藤)
そうして社内で話し合いを進めていくなかで、使いやすさを重視した巾着タイプやバッグのサイズ感などが選定されていった。

若い世代へ、そして持続可能な世界を届けるための挑戦

カルチャーの発信地である代官山の蔦屋書店でお披露目
中村さんが強調していたのは、「レクサスのレザー」を前面に出すことではなかった。主眼は端材や廃材のアップサイクルが未来にとっていかに重要であるか、自動車業界や、ひいては現代社会のありようを訴えることにあるという。
「今回ポップアップを代官山の蔦屋書店で行ったのも、カルチャーの発信地として、デザインやサステナビリティへの意識が高い20代、30代の若者世代にアプローチするためでした。結果的に、自動車メーカーとして新たな販路を開拓できたと思います」(中村)
この狙いは功を奏した。端材や廃材をデザインとクラフトマンシップによって付加価値を生み出していく活動は、決して自動車メーカー内だけで広めるものではないからだ。
企業の社会的責任となりつつあるSDGsへの取り組みをビジネスの機会として捉え、新たな人を繋いでいく。「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」の挑戦は、これからの時代のサステナブルなものづくりのあり方について、ひとつの可能性を示しているだろう。

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