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2021.12.29

2021年のFashion Tech News総まとめ

2018年10月から始まったFashionTechNews、今年は4月にリニューアルを行い、新たな形での再スタートとなりました。昨年と同様に新型コロナウィルスの影響も続く一方、コロナ禍で芽生えた新たな潮流が大きなムーブメントへと発展し、新たな可能性も感じる1年でした。そんな2021年を、FashionTechNews編集部が今年配信した記事とともに振り返ります。

2021年、注目された記事は?

千葉雅也:悪のファッション、歴史の終わりと闘うファッション

2021年、Fashion Tech Newsにて最も読まれた記事は、リニューアル記念のインタビュー特集における千葉雅也さんの記事。ファッションの無駄や過剰さをどう考えていくかという投げかけは大きな反響を呼びました。

今、環境問題やポリティカルコレクトネスの問題を考慮してファッションの無駄や過剰さが反省される局面に入っていますが、その方向で洗練が進んでいくのが基本線でしょう。それに対して、僕としては、その趨勢全体に抵抗するようなファッションがどうすれば可能か、そういうことをやる人がどうすれば出てくるのかと考えています。

それは人類史のある種の「正しい」方向に逆らうようなファッション、つまり悪のファッションです。今後のファッションの世界において悪はいかに可能か。ファッションにおける否定性をどう考えるかということです。否定性をなくせばいいのではない。あるいは、「歴史の終わりと闘うファッション」です。そこに僕は興味がありますね。(インタビューより抜粋)

Fashion Tech Newsでは今年、ファッション/ファッションテックの潮流を発信すると同時に、それを捉えるための枠組みとなる議論の場となっていくことを目標に、思想や文化を掘り下げる記事を数多くお届けしてきました。今後もぜひ、ご期待ください。

バーチャルファッションの先駆者chlomaが導く、VRコミュニティとファッション

バーチャルファッションの先駆者であるchlomaの主宰の鈴木淳哉さんのインタビューも、今年最も話題となった記事のひとつです。ソーシャルVR「VRChat」内での音楽イベント「GHOSTCLUB」とコラボレーションし、バーチャルファッション・ストア「chloma Virtual Store in GHOSTCLUB」をオープン。多くの人がchlomaによるバーチャルウェアの試着を楽しんでいました。
コロナ禍を経て、いっそうバーチャルファッションへの注目が高まってきている一方で、ユーザーの実態や反応が未知数のなか、chlomaの取り組みは重要な先行例となっています。

最近、Facebookを始めとした大きなIT企業からメタバース構想が発表されるのをよく見ますね。ただ、僕はそこで提案されているソーシャルVRにおけるファッションの捉え方に違和感を抱くことが多いです。具体的に言うとファッションやアバターの自由度の無さ。この方向性のままメタバースを実現されたら、ファッション的には完全にディストピアとなると思っています。そのような未来を防ぎたい、バーチャル空間がファッションのユートピアであるように、「無限の自由度があってこそのファッションだし、自由なファッション抜きにメタバースは成立しえない」ということを訴えていきたいです。(インタビューより抜粋)

こういった先駆者たちの思想が、そして挑戦が、どのように業界全体に影響を与えていくか。来年も引き続きバーチャルファッションの展開には注目していきたいと思います。

リアルなバーチャルサンプルで着用画像の合成が可能に:Vstitcher/EcoShotで変わるアパレルEC

国内外のファッションテックのサービス/プロダクトを紹介する記事のなかでは、ボタン1つでバーチャルサンプルをモデルの画像に合成できるソフトウェアとプラグインを日本で代理店展開する株式会社アベイルへのインタビューが、最も注目された記事となりました。
デジタルな衣服のアクチュアルな活用の方向性として、コロナ禍でEC市場が拡大する傾向にあるなか、加速する消費のスピードに対応するためのバーチャルサンプルの導入が業界全体で推進されています。こちらの記事の他にも、3D関連の取り組み事例は、今年とても多く取り上げたトピックとなっています。

2021年、注目のトピックを紹介

バーチャルファッションの盛り上がり、NFTにも展開

昨年、「あつまれ どうぶつの森」などのゲームとともに注目されたバーチャルファッション。冒頭で紹介した今年の人気記事からもわかるように、2021年はさらなる盛り上がりをみせていました。いっそうバーチャルファッションへの注目が高まるなか、VRChatのようなプラットフォームにて多様なアバターが集い、新たなコミュニティを形成していました。そういったなか、フィジカル/バーチャルを越境するファッションの在り方を提示する「fale」のようなプロジェクトも登場。
パンデミックの状況下では、「あつまれ どうぶつの森」や「Fortnite」といったオンラインゲームが実質的にコミュニケーションツールとして機能するケースも。アバターに服を着せることをめぐる松永伸司さん執筆のコラムも注目を集めました。
世界では、初のデジタルファッションハウスとしてデジタルファッション領域を牽引してきたThe Fabricantが「The Fabricant Studio(ザ・ファブリカント・スタジオ)」をローンチし、誰でもアクセス可能なバーチャルファッションデザインを行え、その服はメタバース空間で着用できるという場の提供を開始、NFTでの取引も可能に。NFTに関するファッションの取り組みは、今年に入って劇的に増えてきた印象です。
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