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“汗冷え”を防ぐ高性能インナー:20年を迎えたファイントラック「ドライレイヤー」の革新性
気温が下がるにつれて、アツく盛り上がるウィンタースポーツシーン。スキー、スノーボード、アイススケート……。非日常の銀世界へ、とっておきのヘヴィアウターを羽織って出かける大人も多いことだろう。
ただし、防寒性の高いコートやジャケットだけでは準備は不十分。実はインナーこそが、快適さの鍵を握るというのだ。
PROFILE
田中 由希子(たなか ゆきこ)
株式会社ファイントラック
素材開発担当
吸汗速乾ウエアの下に1枚着るという画期的な発想
まずは株式会社ファイントラックについてお伺いします。創業は2004年の1月、神戸にある一軒家からブランドがスタートしたそうですね。
国内の大手アウトドアメーカーなどで企画開発を担ったベテランと、長年アウトドアライフを実践する有志による、新たなベンチャー企業として生まれました。「遊び手=創り手」のニーズとシーズを結びつける手法は兵庫県の経営革新計画にも認定され、徹底的に安全性を重視しながら日本製にこだわったモノ作りを続けています。

創業者の金山洋太郎さんは、もともと大手アウトドアメーカーご出身だそうで。
はい。少年時代から登山が大好きで、仕事もプライベートもアウトドアが中心。クライミングや沢登り、リバーカヤックなどでも自然を楽しんできました。だからこそ、自分が本当に満足できる快適なウエアがないことに不満を抱いていたんです。そこで54歳のときに一念発起し、会社を設立。自らが使いたいオンリーワンを追求するなかで、「流行り廃りではなく、命を守る機能性優先で勝負したい」というモットーを掲げています。
その経験と情熱から生まれた代表的アイディアが、撥水性のあるアンダーウエア「ドライレイヤー」だったわけですね。
肌をドライに保ち、体温を守る。そのために吸汗速乾ウエアの下に着る、画期的なメッシュ製アンダーウエアです。それまでの登山用ウエアは3レイヤリング(保温下着+保温着+防水着)が常識でしたが、金山をはじめとするファイントラックのスタッフは「汗冷え」のリスクと向き合い、「汗をかいても冷えないアンダーウエア」が必要だと考えたんです。

ドライレイヤーが「汗冷え」を防ぐ仕組みとは
冬に注意したい汗冷えのリスクについて、あらためて教えてください。
汗を流すほど運動している最中は体が熱く保たれていますが、汗が乾く際には熱が奪われます。そして、汗でぬれた吸汗アンダーウエアが乾くまでにはどうしても一定の時間が必要です。その間に肌には濡れたアンダーウエアが接し続け、体温を下げてしまいます。また、人は冷えを感じると、体温維持のためにエネルギーを消費します。つまりドライレイヤーは肌から汗を素早く遠ざけることで汗冷えを防ぎ、余計なエネルギー消費を避けてくれるんです。
だからこそ特にウィンタースポーツにおいては、3レイヤリングのさらに下層にドライレイヤーを据えることが大切なんですね。
その通りです。強力な耐久撥水加工が施されたドライレイヤーの生地は保水しにくく、たとえ上に着た吸汗ウエアが汗や雨でぬれても大丈夫。いつだって保温性を担保し、体温低下を最小限に抑えてくれます。
まるで魔法のようなアンダーウエアですが、その仕組みについてお答えください。
大きく分けて、ふたつの構造が特徴です。ひとつめは、不揃いな糸。ドライレイヤーを構成する繊維は、大きさも形もあえて不揃いな断面形状をしています(※ドライレイヤーベーシックのみ)。その表面積が大きくなった糸の表面に撥水剤をたっぷり行き渡らせることで、糸それぞれがしっかり汗や雨を弾き、洗濯時の耐久性まで高めることができました。
ふたつめは、メッシュ孔の工夫です。一般的なメッシュ生地は、孔の中を数本の糸が通っています。ですが、ドライレイヤーのメッシュ孔は糸が横切らずに貫通しています。これが「汗の通り道」となり、上に重ねたベースレイヤーが汗を吸うきっかけを増やしてくれます。

なるほど。これほど画期的なメッシュ生地が完成するまでは、相当の苦労が伴ったのではないでしょうか。
試作品を作ってはフィールドテストをして、さらにフィードバックの繰り返しですね。生地の開発から製作・撥水加工・縫製にいたるまで、すべてが前例のないことばかりでしたから。たとえば、生地の薄さも試行錯誤の賜物です。何度もテストを繰り返した末に、一度は「薄くしすぎて失敗だ」と言われた約0.4mm厚の生地を取り入れて製品化しました。非常に軽い着心地で、かつ優しいストレッチ性能を合わせ持つので、ハードなアクティビティにおいても快適に着用いただけます。

また、前出の貫通メッシュはそもそも最新の編み機では生産できないもの。そのため、昔ながらの編み機を大切にメンテナンスしながら、今もゆっくりと丁寧に編み立てています。

日本製にこだわるジャパンブランドには、日本の繊維産業の伝統も息づいているんですね。今年でドライレイヤーの誕生から20年が経ちましたが、今後の展開は?
詳細まではお伝えできませんが、SDGsに配慮した生地の開発を続けています。また、ドライレイヤーは女性ユーザーが非常に多いアイテムです。やはり女性は、冷えに関する悩みが多いのでしょう。ゆえに、今後は女性ユーザーに向けたラインナップの増強、PRの拡張も検討中です。ぜひご期待ください!2004年に生まれたアンダーウエアの革命児は、2019年にはさらに保温性能を高めた「ドライレイヤーウォーム」、2020年には心地よい接触冷感を備えた「ドライレイヤークール」にも派生した。

その流れの中で、ファイントラックは多くのプロフェッショナルから支持を獲得。過酷なフィールドで戦うアスリートだけでなく、山岳救助隊や自衛官からも厚い信頼を寄せられている。
「遊び手=創り手」。遊びの中で培われた自由な発想と本質を見極めるチカラが、日本の冬をもっと楽しく、もっと安全な景色へと変えていく。
Text by Naoki Masuyama






















