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軽量化の一歩その先へ: 「バーサライト パック20」が 映し出す、モンベルの設計思想
荷物の軽量化は、行動の自由度に直結する。モンベルの「バーサライトパック」は、登山における「装備の軽量化」というテーマに、真正面から向き合ってきた。
追い求めてきたのは、背負った瞬間に実感できる軽さと、行動中もストレスなく使い続けられる安定感だ。素材や構造を吟味しながら進化を重ねてきたこのバックパックは、モンベルが長年磨き上げてきた「Function is Beauty(機能美)」「Light & Fast(軽量と迅速)」という思想を、もっともよく体現するプロダクトのひとつである。
本記事では、シリーズ中随一の人気を誇る20Lの「バーサライトパック 20」にフォーカスし、PR担当の宝迫哲史さんとともに、そのスペックや開発背景を紐解いていく。
PROFILE
宝迫 哲史(ほうさこ てつし)
株式会社モンベル 広報部
店舗スタッフを経験後、広報部に異動し、PR担当に。好きなアクティビティは登山とクライミング。休日は岩場でクライミングを楽しむ。
モデル名に込められた、多用途と軽量性の両立という目標
「バーサライトパックは1992年に登場しました。バーサライト(Versalite)とは、“多用途(Versatile)”と“軽量(Light)”を掛け合わせた造語です。単に軽いだけではなく、行動や用途を限定しない汎用性を備える。そのコンセプトが、この名前には込められています」
20Lの容量こそが日帰り登山用バックパックの最適解
「日帰り登山において、装備の軽量化は永遠のテーマです。行動時間は限られ、持ち運ぶ装備も必要最低限に絞る必要があります。その一方で、天候変化や行動量に対応するための余白は確保しておかなければなりません」日帰り登山において、20Lという容量はもっとも現実的なサイズといえる。レインウエアや防寒着、水、行動食といった必携装備を過不足なく収められる一方で、余分なスペースが生まれにくい。
結果として、パック自体の重量を抑えやすくなり、行動中のストレスも少なくなる。やはり「20L」という容量には明確な理由がある。
「20Lはアタックザックとしての使用も視野に入れています。縦走登山やベースキャンプを伴う行程において、メインパックとは別に携行するサブパックとしても機能します」

一般的なバックパックと一線を画す、220gという軽さ
一般的な20Lの登山用バックパックは700g程度だ。ショルダーパッドやフレームなどを備え、快適性を高めた構造のものであれば、これでも決して重い数値ではない。一方、バーサライトパック20Lは重量が約220gに抑えられている。これは一般的な同容量クラスのものと比べて500g以上も軽い計算になる。220gという重量は、紙パック飲料1本分ほどに相当する。空の状態で背負うと、ほとんど何も背負っていないかのように感じられる。
「近年、ウルトラライト志向のバックパックは市場に数多く存在します。しかし、登山で使う以上、背負ったときのバランスや行動中の安定感は欠かせません。バーサライトパック 20は、あくまで登山用バックパックを前提に、軽量化と実用性の両立を図りました」
必要な機能だけを残し、不要な要素は徹底的に省く。その取捨選択の積み重ねによって生まれたのが、この20Lモデルというわけだ。

耐久性も妥協しない、バリスティックナイロンという選択
軽量化と実用性を両立させるうえで、生地選びは最初の分岐点になる。本体に採用されているのは、モンベル独自の30デニール・バリスティックナイロン・リップストップだ。「軽さを優先するために、強度を犠牲にすることはできません。そこで、強度と軽量性を両立できるバリスティックナイロンを採用しました。ナイロン糸の段階で延伸加工を施すことで、通常のナイロンよりも引き裂き強度を高めています」

負荷のかかりやすい底面には、100デニールのナイロン・リップストップを採用した。
「底面は地面に置いたり、岩や土に触れたりする機会も多い部分です。全体を厚手の素材にするのではなく、必要な箇所にだけ強度を持たせることで、軽量性とのバランスを取っています」
さらに、軽量化追求のためこのモデルはフレームレス構造で設計されている。
「より軽くするために背面クッションも省略しています。その分、バックパックの位置を安定させるチェストサポートや、荷重が肩に集中するのを防ぐウエストベルトによって、背負った際の安定感を確保しています」
ショルダーハーネスは肩に自然に沿う形状を採用した。過剰なクッションに頼らず、体との接点を最適化することで、軽量性とフィット感を両立させている。
実際に背負ってみると、パックが体に吸い付くように収まり、歩行中の揺れも最小限に抑えられる。フレームがない分、バックパックは体の動きに自然に追従し、歩行や上り下りの動作を妨げない。軽さがそのまま動きやすさにつながる感覚だ。
サイドポケットやストラップ類も、登山での使用を想定した数と配置にとどめられている。行動中に引っかかりにくく、動作の邪魔にならない。「足し算をしない設計」が、ここでも徹底されている。

縦走登山を想定したアタックザックとしての携帯性
このパックの汎用性を高める決め手となるのが、驚くほどコンパクトなサイズになるポケッタブル仕様だ。「使用しないときは、本体をトップリッド(雨蓋)に収納できます。縦走登山でのアタックザックや、旅先でのサブバッグとして携行されることも想定しているため、極力コンパクトにまとめられる構造にしました」

収納に関してもとことんこだわり、シンプルさが重視された。
「大切なのは、必要な道具へスムーズにアクセスできることです。そのため、ポケットや仕切りも最小限にとどめました。使用頻度の高い装備はトップリッドに、比較的重たいものは体に近い位置に収納することで、背負った際の安定感が高まります」
軽さは目的にあらず──すべては行動の自由度を高めるために
素材から構造、ディテール、収納にいたるまで、すべてが行動を妨げないよう組み立てられている。「軽量化は目的ではなく、あくまで行動をより自由にするための手段です」
宝迫さんの言葉通り、モンベルが掲げる「Light & Fast」は単なる軽量化競争を意味するものではない。フィールドで自在に動き続けるために、何を残し、何を削るのかを突き詰めること。バーサライトパック 20は、その問いに対する明確な答えを、極めて分かりやすい形で提示しているのだ。
Text by Ryota Osujo


















