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YKKとの開発で実現した画期的な止水ファスナー:ファイントラックが辿り着いたレインウエアの最高到達点

2025.04.16
「finetrack(ファイントラック)」は、2004年に大手アウトドアメーカーで企画開発を手がけた金山洋太郎氏が設立したアウトドアブランドだ。
「流行にとらわれず、命を守る機能性を優先するギア」をモットーに掲げ、ジャパンメイドにこだわったモノ作りを続けている本ブランドは、本物志向のアウトドアマンたちから高い支持を獲得している。
そんなファイントラックの実力を世に知らしめたレインウエアの名作「EVERBREATH PHOTON(エバーブレスフォトン)」が8年ぶりにリニューアルされた。
誕生から今回の改良までこのアイテムを知り尽くした商品企画担当者が、生まれ変わったエバーブレスフォトンを語り尽くす。

PROFILE

相川 創(あいかわ そう)

株式会社finetrack 1975年生まれ。検査機器メーカーでのエンジニア職を経て、2008年にファイントラックへ。金山代表の下でアウトドア商品企画を学び、現在は商品企画課課長を務める。趣味はアウトドアで、休日はバックカントリーテレマーク、沢登り、クライミングを楽しむ。

独自の防水透湿素材・エバーブレスを使ったレインウエア

「エバーブレスフォトン」 38,500円(税込)
エバーブレスフォトンが誕生した経緯を教えてください。
2012年にこのモデルの初代となる「エバーブレスフォトンスーツ」をリリースしました。
その頃はまだストレッチ生地を使ったアウトドア用のレインウエアはほとんどなく、動きにくかったり、シルエットが太かったりするものばかりで、「雨をしのぐために我慢して着る服」でした。
そこで私たちは、ストレッチ生地を使って、動きやすくて着心地がよく、かつシルエットも美しいレインウエアを作ることにしたのです。
ストレッチ性のほかに「機能の耐久性」にも力を入れています。これは、耐水圧が保たれるだけでなく、雨のなか長時間着用し続けても透湿性が保たれることを意味します。
この「優れたストレッチ性」と「機能の耐久性」は当初からのエバーブレスフォトンの設計思想で、新モデルにも引き継がれています。
メインの素材は何ですか?
「EVERBREATH(エバーブレス)」という独自に開発した防水透湿素材です。優れたストレッチ性が特徴で、現行品だとタテ向きに約107%、ヨコ向きに約117%伸縮する生地を採用しています。
とはいえ、ただ生地が伸び縮みするだけでは完璧な快適性は実現できません。特に雨の降るフィールドで快適さを感じるためには耐水性とぬれても持続する透湿性が不可欠です。
たしかに雨を防げても、汗で体がぬれてしまったら意味がありません。
雨が降る登山時、動作によって起こる瞬間的な圧力に対応するには、10,000mm以上の耐水圧が必要とされています。
そこで20,000mm以上の耐水圧と透湿性能を長期にわたって維持できる生地を設計しました。
どうやって高い機能の耐久性を実現しているんですか?
表側のストレッチ生地と裏側のニット生地の両面に耐久はっ水加工を施しています。
防水性や透湿性の優秀さだけでなく、機能が長続きすることにこだわることで、初めて過酷なフィールドでも長時間快適に過ごせるレインウエアになるんです。
耐水性はどれくらい持続するんですか?
具体的な持続時間に関しては、環境や使用方法によっても異なるため、検証はしていません。
ですが、今回リニューアルしたエバーブレスフォトンでは、耐水圧保持率測定試験によって、約2万回のストレッチ試験、約3万回の摩耗試験の後も防水性が持続することが証明されています。
また、生地の素材に加水分解しにくいポリカーボネート系ポリウレタンを使っている点もハードユースに役立ちます。
耐水圧保持率が高いことが特徴
細部も作り込まれていますね。
フードはヘルメット着用時も、未着用時も頭にフィットする形状になっており、後方からの音が聞こえやすい音抜き穴も装備しています。
リンクベントと呼ばれる両サイドの大型ベンチレーションは、ミッドレイヤーなどと共通の位置に設けることで、効率的な換気が可能です。これらはファーストモデルからの共通のディテールです。

YKKと開発した新しい止水ファスナーの実力は?

8年ぶり4度目のリニューアルとのこと。新型はどこが進化したんですか?
一番大きな変更点はファスナーです。ファイントラックは、世界的なファスナーのリーディングカンパニーであるYKKの「AquaGuard® Tightened(アクアガード タイトゥンド)」という新しいファスナーの開発に協力しました。
従来の止水ファスナーとどこが違うんですか?
止水ファスナーとは、ファスナーテープの表面がポリウレタンフィルムでラミネートされたもの。ファスナーを閉めるとテープが密着して、細かい隙間から水が浸入しにくくなるようになっています。
軽くコンパクトな構造ですが、フラップなしで降雨に耐える耐水性は実はありません。
従来の止水ファスナーの欠点を克服したんですね。
AquaGuard® Tightenedの場合は、左右のファスナーテープが密着し、押し合うことでM字のふくらみが生まれます。この構造によって、雨水の浸入を大幅に軽減することができます。
止水ファスナーは左右のファスナーテープが“線”で密着するのに対し、AquaGuard® Tightenedは“面”で密着するため、従来の止水ファスナーよりも格段に耐水性が高まります。
また、ファスナー単体での耐水圧が高いため、浸水をカバーするフラップという当て布も省略できました。その結果、ファスナーがフラップを噛むというトラブルがなくなり、また、ファスナー周りの簡素化によって、すっきりとしたシルエットを実現できました。

冷蔵庫のパッキンがヒントになった画期的な構造

どのようにして開発がスタートしたんですか?
2018年頃からYKKにリクエストをしていて、本格的に開発が始動したのは2020年です。それまでにも防水性の高いファスナーは存在していましたが、形状が大きく、一般的なアパレルには使用することが難しいものしかありませんでした。
私たちが求めていたのは、サイズや重量は従来の止水ファスナーくらいで、フラップなしでも高い耐水性を発揮するファスナーでした。
この左右のテープが密着するという構造はYKKの開発担当者が試行錯誤を重ね、冷蔵庫のパッキンをヒントに思いついたものです。
完成までにかなりの時間がかかっていますね。
2022年に初代プロトタイプが完成し、その後、フィールド試験やフィードバックに協力しながら、ようやく今年、製品化にこぎつけました。
もっとも苦心したのは、ファスナーの摺動性(しゅうどうせい)でした。これは素材の摩擦の少なさや滑りやすさを表すもので、頻繁に開閉を行うファスナーにとっては重要な性能です。
耐水性を上げると摺動性が下がり、反対に摺動性を重視すると耐水性が犠牲になってしまう。そのバランスを調整するために、YKKの開発担当者は試作を、私たちはフィールドでのテストを何度も繰り返しました。
今季は5種類のカラーを展開
他に改良した点はありますか?
生地自体の設計も見直し、新しい技術を盛り込みました。
まず、ハードに使っても耐水圧を持続できるよう糸使いや組織、裏地のニット生地を変更しました。
こうすることで、ストレッチの持続性や生地の耐摩擦性、汗や皮脂汚れによる防水透湿膜へのダメージに対する耐久性が向上しました。
質感もこれまでとはひと味違うマットな仕上がりに。落ち着いた発色を生かしたカラー展開も可能になりました。
リニューアルによって、レインウエアとしての完成度がいっそう高まりましたね。
「レインウエアの使命とは何か?」をファイントラックは考え続けてきました。
雨をしのぐだけでは、十分ではありません。自然の中で安全に行動し、無事に帰ってくることをサポートする。そのうえでユーザーに快適さをもたらすこと。これがエバーブレスフォトンの使命です。
YKKと開発したAquaGuard® Tightenedが持つ意味も大きく、この新型ファスナーの登場によって、今後、レインウエアはよりシンプルかつ軽量な構造になり、デザインの幅も広がっていくでしょう。

生まれ変わったエバーブレスフォトンは、レインウエアの新しいセオリーとなるポテンシャルを秘めている。

Text by Ryota Osujo

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