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【日本未上陸】“家”の心地よさを、外の世界へ──ロシア発「ホーミーズ」が提案する、自分らしく歩くためのフットウェア

2025.10.01
2020年、世界が静止したとき、ロシア・サンクトペテルブルクの一角で一足の靴が生まれた。“外でも履けるスリッパ”という逆説的な問いから始まったプロジェクトは、やがて「ホーミーズ(HOMIES)」という名のフットウエアブランドへと進化を遂げた。
パンデミックによって生活が一変するなか、“家で感じる自由なエネルギー”を外の世界へ繋げたいという想いから生まれたホーミーズ。そのシンプルでありながら計算されたフォルムと素材選びは、世界中に静かな共感を呼んでいる。
今回、創設者ヴィタリー・ポリャコフ(Vitalii Polyakov)に、ブランド哲学と創作の背景について話を聞いた。

PROFILE

ヴィタリー・ポリャコフ(Vitalii Polyakov)

ホーミーズ 創設者

“内側”から湧き出る靴づくり

「ホーミーズ」は、2020年、パンデミック下のサンクトペテルブルクで誕生した。それはファッション業界へ台頭するためではなく、「内側から自然に湧き出たプロジェクト」だと創設者のヴィタリー・ポリャコフは語る。
彼はファッションデザインを学んだ後、アントワープの伝説的なアートアカデミーで、フォルムとプロポーションに対する鋭い審美眼を磨いた。そこで出会ったミニマリズムの力、そして機能と美の融合が、やがて彼を「存在することを支えるため」の靴づくりへと導いたのだ。
「私がずっと考えていたのは、靴は単なるファッションアイテムではなく、生活のリズムや個人の動きに寄り添う存在であるということでした」とヴィタリーは言う。パンデミックによって家と外の境界線があいまいになった時代に、彼は「スケジュールに縛られない暮らしの中で、靴はどうあるべきか」を問い続けた。
その答えの一つが、初期モデルである“ヒールソックス”だ。
「家でのリラックス感と、外での動きをゆるやかに繋ぐ靴。ミニマルで適応的、そして決して主張しすぎない。静かで、それでいて明快な美しさを持つものを求めていたのです」

「home」に宿るリズムと感情

ブランド名の由来もまた、自然発生的だった。最初のサンプルを履いたとき、ヴィタリーの口をついて出たのは「home」という言葉だったという。
「幼い頃、自分の部屋は解放される場所で、外の世界とは違う特別なリズムがありました。服を切り刻んだり、鏡の前で踊ったり。そんな内なる自由のエネルギーを、外の世界にも持ち運べる靴を作りたいと思ったのです」
ホーミーズの靴が体現するのは、その「home」という感覚だ。それは物理的な“家”ではなく、「自分らしく、解放され、自由でいられる精神状態」を指す。
「靴は『その人のリズムに寄り添うもの』でなければなりません。私たちの靴は、人を定義するためではなく、その人に従うためにデザインされています」
そのデザインは、「形態は機能に従う(Form follows function)」という徹底した機能主義に根ざしている。余計な装飾は削ぎ落とされ、構造は緻密に設計されているが、それは冷たさとは無縁だ。
身体にしっくりと馴染み、履く人の“在り方”を優しく包み込む。この「沈黙と明快さの美学」こそが、ブランドの核なのである。

世界へと歩みを進める、明晰さと自由のラグジュアリー

2024年、生産拠点をポルトガルに移した。「ヨーロッパに拠点を持ち、国境を超えたビジョンでブランドを築くため」という明確な目的からだ。ヨーロッパ全域はもちろん、日本など、世界各地へと着実に活動範囲を広げている。
独立ブランドとしての姿勢を貫きつつも、少量生産の体制は崩さない。素材の選定にも細心の注意を払う。
「素材には必ず役割があります。柔らかさ、耐久性、そしてサステナビリティ。すべてが靴の意図に直結しているのです」
ホーミーズが捉えるラグジュアリーとは、見せかけのステータスではなく、「明晰さと自由さ」だ。「本物の贅沢とは、自分のために時間を持ち、余分なものを取り除くこと。そして、自分のリズムで生きること。靴もまた、そういう生き方をサポートする道具であるべきだと考えています」とヴィタリーは断言する。
ホーミーズが生み出すのは、単なる靴ではない。それは、履くことで心の中に生まれる「余白」であり、日々の生活に寄り添う「状態」そのものだ。
創設者ヴィタリーの言葉ひとつひとつに、覚悟と誠実さが滲む。ブランドは静かに、しかし確実に、世界中で共鳴の波を広げている。
「ホーミーズ」──その足音は、誰にも媚びることなく、未来を歩いている。

Text by ELIE INOUE

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