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“メキシコの日常”がファッションへ: Letra(レトラ)と職人が紡いだ「メルカドバッグ」の美しさ

2025.06.12
プラスチックコードで丁寧に編み上げられた、色鮮やかで軽やかなカゴバッグ。株式会社ソラオブトウキョウはメキシコの職人によって生み出されるこのバッグを「メルカドバッグ」と名づけ、ブランド・Letra(レトラ)を展開して日本にファンを増やしてきた。
メルカドバッグの誕生秘話と、Letraとメキシコの信頼関係によって生み出されるアイテムに込められたこだわりを、Letra事業部長の小川典洋さんに聞いた。

メキシコの市場での出会いが原点

レディースアパレルブランド・flower(フラワー)で知られるソラオブトウキョウ。Letraの物語は、代表・北嶋正則さんのメキシコ旅行から始まる。アメリカ・ロサンゼルスに拠点を持っていた北嶋さんは、2004年頃に訪れたメキシコ南部のオアハカのマーケットで、可愛らしいカゴバッグと出会った。
その鮮やかな色彩や独特のフォルムに魅了され、インポートアイテムとしてflowerで販売を始めたのが、メルカドバッグ誕生の原点だ。
代表の北嶋正則さん(右)
色とりどりのバッグはflowerの売り場をカラフルに彩り、瞬く間に女性客から人気を博した。Letraを統括する小川さんは「カラフルでチープすぎない“ちょうどいい”おもちゃのような質感や、人とかぶらない一点もののデザインが、新鮮に受け止められたのだと思います」と振り返る。
取り扱いを始めた当初のメルカドバッグ
2010年頃、北嶋さんがロサンゼルスのローズボール・フリーマーケットでもメキシコのカゴバッグを販売し始めると、買い付けに訪れた日本のセレクトショップから注文が集中する。そして日本での本格的な流通の可能性を探り始めた頃、メキシコで生産されるバッグの形に変化が生まれてきた。
「もとのバッグは素材となるコードも太くて、少しフォルムがゴツゴツとしていました。でも時代や需要の変化に合わせて、細いコードで編んだ柔らかく使い勝手のいいバッグが作られるようになってきたんです。
2014年に日本で行われた展示会に前身ブランドで出展し、次第に自社での生産も始めるようになって、本格的にブランド展開がスタートしました」
現地では決まった名称がなかったこのカゴバッグに、北嶋さんが“メルカドバッグ”という名称を授けたのもこの頃だ。
メキシコでメルカドバッグは買い物や畑仕事に持っていくなど、ファッションとしてのバッグではなく“日常的に使う汚れてもいい丈夫なバッグ”として根付いている。そこで、スペイン語で「市場」を意味する「mercado(メルカド)」の名を冠したという。

畑仕事からファッションアイテムへ

メキシコで作られるカゴバッグは、各地域によって独自に発展を遂げてきた。Letraが関係を紡いできたオアハカでは、もともとヤシの葉を用いたカゴ編みの技術が根付いていたが、1990年代にはプラスチックコードが使われるようになっていく。
農作業において収穫物を入れる際、水に強く丈夫で劣化しづらいプラスチック製のバッグは利便性が高く、急速に普及し始めた。
Letraが独自でメルカドバッグの生産を始めるにあたり、大事にしたのは現地の雰囲気や、実際に編み上げる職人の思い。そのうえで、日本のユーザーのニーズを丁寧にキャッチしながら、職人たちと共に少しずつバッグをアップデートしてきた。
特にこだわったのはカラーリングだ。現地ではメルカドバッグを畑仕事や市場での買い物に用いていたため、「泥などの汚れが目立つ色は避けたい」という思いや、カラフルなものを好む現地の感覚もあり、シンプルな無地やホワイトのバッグの制作は理解されづらかった。しかし、「日本の街並みに馴染むから」という思いで職人に説得を重ね、実現へとこぎつけた。
「メルカドバッグを、畑仕事用ではなくファッションアイテムやタウンユースのアイテムとして提案したいという意図を、現地の職人へ丁寧に説明しました。
そうして生まれた無地やホワイトのアイテムは日本ではもちろん好評をいただいたのですが、今や現地でも定着して、新たなトレンドになっているんですよね(笑)。これは面白い逆転現象でしたね」
現地では大容量のMサイズ(縦:約31cm/横:約33cm)が多く使われるが、LetraではA4サイズが入るSサイズ(縦:約29cm/横:約31cm)と、そのひと回り下のXSサイズ(縦:約24cm/横:約27cm)が特に人気があるという。メルカドバッグが日本のユーザーに、日常使いのファッションアイテムとして受け入れられていることがよくわかる。

細かなカスタマイズは、信頼関係があるからこそ

メルカドバッグには、メキシコの歴史や文化の意匠も色濃く反映されている。幾何学模様やジグザグの柄などは、オアハカ州のサポテカ文明に起源を持つモチーフが多く、小川さんは「実際に現地のミトラ遺跡で見たモザイク装飾が、メルカドバッグのデザインにすごく似ていて驚いたこともありました」と述懐。
ミトラ遺跡の壁画
メルカドバッグは、メキシコの歴史と文化にインスピレーションを受けている柄が多い
Letraのデザイナーはそうしたメキシコの伝統もリスペクトを込めて生かしつつ、現代の日本の暮らしにフィットするチェック柄をオリジナルで取り入れるなど、再構築しながらデザインを提案しているそうだ。
バッグの製作手順はとてもアナログ。型となる箱にコードをヘラで差し込みながら、職人が一目ずつ編んでいく。Letraが豊富なサイズ展開を実現させたり、日本のユーザーがより使いやすいよう、取っ手の長さなどをマイナーチェンジさせたりしてこられたのは、15年以上にわたって現地と築き上げてきた関係性の賜物だろう。
職人の手作業で一つひとつ作り上げられていく
「別注で細かくサイズ感を調整してもらうこともありますが、そこまで細かいリクエストをするのは、通常は現地の職人に嫌がられるんですよね。僕たちの頼みなら、と受け入れてもらえる関係性を作ることができたのは、Letraにしかない強みだと思います」
現在のコアターゲットは30〜40代の女性だが、シックなカラーリングからポップな柄物まで、豊富なデザインをシーズンごとに随時20種以上用意。20〜60代以上までの幅広いユーザーが、用途やスタイルに合わせて自由に選べるラインナップになっている。
初めて手にする人は黒やモノトーンなどベーシックなカラーを好む傾向があるが、2個目以降では「冒険してみよう」とカラフルな柄を楽しむ人も多い。
コーディネートを選ばないシックなカラーも、メキシコらしい鮮やかなカラーも豊富に取り揃えるのがLetraの魅力。右の特徴的な柄は「カニ」をモチーフにしているとのこと
Instagramでは、子ども服にメルカドバッグを合わせたキッズ向けコーディネートの提案も目を引いた。
「メルカドバッグは砂や泥が付いても水で気軽に洗えるので、実は子育て中の方にも使い勝手がいいんですよ。お子様と一緒に共用してもらえたらうれしいですし、子どもたちが成長して大人になってから、今度は自分で好きなメルカドバッグを選んで使ってもらえたら、さらに幸せですね」

心を豊かにできる存在になりたい

多種多様な場面で、自分らしく楽しめるメルカドバッグ。小川さんは「メルカドバッグはこうであるべき、という理想像はない」と話す。
「Letraはメルカドバッグのブランドだと思われているかもしれないですが、“メキシコの生活雑貨を日本に紹介する、ライフスタイル提案型ブランド”として始まりました。メルカドバッグはタウンユースにとどまらず、大きなサイズをインテリアアイテムとして活用することもできるので、雑貨屋さんでのお取り扱いも増えてきているんですよ。僕たちのアイテムが生活の一部になることで、少しでも心を豊かにできる存在でありたいです」
頻繁にメキシコへ足を運んでいる小川さん。「メキシコは人懐っこい方が多くて、いつも好意的に迎えてくれるんです。ごはんも本当においしいし、昔から受け継がれてきた美しい技術も素晴らしいので、そうしたメキシコの魅力をこれからも届けていきたいですね」と微笑んだ。
大量生産ではなく、人の手で一点ずつ丁寧に編まれた色鮮やかなメルカドバッグ。Letraはそこに宿る文化や人のぬくもりも含めて日本へ発信し、人々の暮らしを彩っている。

PROFILE

小川 典洋(おがわ のりひろ)

株式会社ソラオブトウキョウ Letra事業部ディレクター
1983年生まれ 神奈川県在住
学生時代からのファッション好き。レギュラーからヴィンテージ まで幅広く古着を愛す。
現職前には同社にてバイヤー、店長、営業などを歴任。新卒でアパレル専門商社に勤めるも、よりファッションの前線に身を置きたいと思い現在の会社へ転職。北嶋代表のもと現在進行形で様々な経験を積んでいるところ。
Letra事業には前身となるメキシコ雑貨の輸入販売活動から携わり、2015年から本格的に担当として着任。メキシコの美しい手仕事の品々を日本へ紹介している。オアハカには年3、4回訪れ現地の方々と密に交流している。
好物は現地の市場や街角のtaco de carnitasとtlayuda、そしてオアハカコーヒー

Text by 岸野 恵加

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