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“探す時間”をゼロにするリュック:ロペ エポール「Pac Sac」1万点ヒットの舞台裏

2026.04.13
ÉPOR(ロペ エポール)が展開するリュック「Pac Sac(パックサック)」が、働く女性たちの間で静かな支持を広げている。累計販売数1万点を超え、ECサイトのランキングでも売り上げ1位を記録するこのプロダクトは、一見するとどこにでもあるリュックに見える。ところが、その内部には現代の女性が抱える課題を解決するための緻密な設計が隠されていた。
開発を担当したデザイナーの佐藤詩恵さんに取材を行い、ヒット作の裏側にある「システムキッチン」に着想を得たという発想と、機能と美しさを両立させるための試行錯誤を伺った。

PROFILE

SHIE

ĒPORデザイナー

ハイブリッドワーカーが抱えるリュック選びのジレンマ

現代の働く女性たちのライフスタイルは、かつてないほど多様化している。仕事だけでなく、育児や家庭、個人の趣味など、一日のうちにいくつもの役割を切り替えながら過ごす「ハイブリッドワーカー」が増加した。通勤スタイルがカジュアル化したこともあり、両手が空き、身体への負担が少ないリュックをビジネスシーンで選択する女性は急速に増えてきている。
だが、市場にあるリュックの多くは、女性たちのニーズを完全に満たしてはいなかった。アウトドアブランドの製品は機能性に優れるものの、ジャケットやきれいめのスタイルには合わせにくく、一方で、女性向けにデザインされたリュックは、装飾過多なデザインで機能性が犠牲になっていた。
「働く姿も、快適に美しく」をコンセプトに掲げるロペ エポールにおいて、佐藤さんが目指したのは、あらゆるシーンで利用できるリュックの開発だった。ターゲットとしたのは、仕事の後に子どもの送迎を行い、休日は公園へ出かけるような女性や、仕事外の時間をアクティブに過ごす多忙な日々を送る女性たちだ。
彼女たちが求めているのは、単に荷物を運ぶ道具ではなく、どんな場面でも自身の佇まいを美しく保ち、所作をスマートに見せるための相棒だった。

「システムキッチン」に着想を得た機能美

新しいリュックの構想を練るなかで、佐藤さんが着想の源としたのは、意外にも「システムキッチン」だった。
システムキッチンは、外見上は非常にモダンでシンプルであり、生活感が出ないような洗練されたデザインをしている。しかし、ひとたび引き出しや扉を開ければ、そこにはカトラリーや調理器具、調味料などが整然と収まるように計算された収納空間が広がっている。すべての道具が使いやすい場所に配置されているため、調理を効率的かつスムーズに行うことができる。
佐藤さんは、この「外見はシンプルだが、内部は高度に機能的」という構造こそが、現代の女性用リュックに必要な要素だと直感した。リュックの最大の難点は、収納力の高さゆえに中身が整理しにくく、底の方にある荷物を手探りしてしまうこともあるだろう。ポーチで小分けにする手間や、レジ前で荷物を探してもたつく時間は、ストレスの要因となっていた。
「Pac Sac」という名前には、荷物をパッケージするように整理し、シンプルに持ち運ぶという意味が込められている。システムキッチンのように、外側からは機能の存在を感じさせず、しかし使用者はその恩恵を最大限に受けられる。このコンセプトが、開発の指針となった。

ノイズを削ぎ落とし、内側に機能を凝縮する設計

大容量ながら、外観はスタイリッシュに
システムキッチンの思想を反映させるため、佐藤さんは徹底的に「ノイズ」を削ぎ落としていった。一般的な機能性リュックであれば、サイドにペットボトル用のポケットを配置したり、外側に多くのファスナーポケットを設けたりするのが定石だ。しかし、佐藤さんはそれらをあえて排除する決断を下した。
外側に凹凸や装飾が増えれば、どうしてもカジュアルな印象が強まってしまう。メゾンブランドのバッグのような高級感と、ジャケットスタイルにも馴染む洗練された佇まいを実現するためには、外見はミニマルである必要があった。その代わり、内部の構造には徹底的なこだわりが詰め込まれた。
鍵となるのは「物の住所」を決めることだ。PC、タブレット、スマートフォン、財布、鍵など、持ち歩くアイテムそれぞれに最適な収納場所を割り当てることで、ユーザーは容易に目的の物を取り出せるようになる。
まず特徴的なのは、メイン収納と多機能ポケットがあるサブ収納をまず大きく2つに分割された構造体だ。メイン収納内に設けられた14インチPCスリーブと、サブ収納内にあるタブレットポケットで、それぞれを独立収納ができるよう設計されている。また、鍵を取り付けるためのキーリングも、必要な時に素早く取り出せるような工夫がされている。
物の住所を決めることで、出し入れをしやすく
さらに、バッグが「自立する」ことも、美しさを構成する重要な要素だと佐藤さんは語る。床や椅子に置いた際、バッグがくたっと倒れてしまう姿は決してエレガントとは言えない。芯材や構造を工夫し、中身の量に関わらず凛と自立するフォルムを実現することで、置いているときの佇まいまでもが美しくなるよう配慮されている。

「探す時間」をゼロにするためのアップデート

発売から約2年を経て、「Pac Sac」は初めての大規模なアップデートを迎えた。このリニューアルにおいても、佐藤さんの視点は「いかに美しくするか」という点に注がれている。
最大の改良点は、内部へのペットボトルホルダーの追加だ。前述の通り、外観の美しさを優先してサイドポケットを設けていないため、これまではペットボトルや折りたたみ傘がバッグの中で倒れてしまうことがあった。そこで、外見には一切影響を与えないよう内部に専用のホルダーを設置。これにより、ボトルを立てたまま収納でき、他の荷物と交ざることを防いでいる。
内側の両サイドにポケットを配置し、水筒や折りたたみ傘の収納に
また、ショルダーストラップには新たにストラップと取り外し可能カラビナが追加された。ここにはパスケースやワイヤレスイヤホンなどを取り付けることができ、改札や移動中の動作をよりスムーズにする。
デザイン面での微調整にも注目したい。ショルダーストラップの取り付け角度をわずかに斜めに変更することで、背負った際に生地に寄るシワを軽減し、より身体にフィットするよう改良されている。
ストラップの角度調整でバッグのシワと身体への負担を経験
さらに、フロントポケットのファスナーの始点を変更し、片手でも開閉しやすい構造へと進化させた。これらの変更は、一見すると気づかないほどの細かなものだが、使用感と見た目の美しさを大きく向上させるためのアップデートだった。
ファスナーの食い込みやスライドでわずかなストレスも感じさせない工夫
素材には、環境への配慮と機能性を両立させるため、リサイクルナイロンが採用された。数あるナイロン素材の中から、適度な光沢感と張りを持つものを選定し、撥水加工を施している。この撥水性能は、小雨程度であれば傘をささずに移動できるもので、天候を気にせず使える点も、多忙な女性たちにとってうれしい機能となっている。
撥水等級は4級ということで、性能はお墨付き

働く女性のあらゆるシーンを美しく整える

こうして完成した「Pac Sac」は、多くの女性たちから「まさにこれを探していた」という共感の声をもって迎えられた。
特に評価されているのはその「スタイルアップ効果」だ。佐藤さんは、リュックを背負った姿がいかにスタイリッシュに見えるか、身体のラインを美しく見せるかという点に腐心したという。大きすぎず小さすぎない絶妙なサイズ感と、身体に沿うフォルムは、リュック特有の野暮ったさを払拭している。
また、サイズ展開にも戦略的な意図があった。14インチPCが入る通常サイズに加え、一回り小さい「Mini」を展開。PCを持ち歩かない日や、より軽快に動きたいシーンに合わせて選択できるようにした。これは、デジタルデバイスの変化や働き方の多様化に合わせた提案であり、小柄な女性でもバランスよく持てる選択肢として機能している。
カラーバリエーションにおいても、黒だけでなくダークブラウンやベージュといったニュアンスカラーを展開することで、ビジネス一辺倒ではない、ファッションアイテムとしての楽しさを提供している。金具にはゴールドやシルバーを使用し、アクセサリーのような輝きをプラスすることで、女性らしさを演出している点も特徴的だ。
ベージュはゴールドを差し色にすることで、ブラックとは違った印象を与える
ロペ エポールの「Pac Sac」は、単に荷物を運ぶための道具ではない。それは、システムキッチンのように生活のノイズを隠し、必要な機能を必要な時に提供する、洗練されたリュックなのである。
佐藤さんが目指したのは、リュックというプロダクトを通じて、働く女性たちの時間を整え、その佇まいを美しくすることだった。物が整理されれば、探す時間が減る。探す時間が減れば、心に余裕が生まれる。そして、その余裕こそが、忙しい日々を送る女性たちの美しさの源泉となる。
機能性と美学を高度に融合させたこのリュックは、ハイブリッドに働く現代の女性たちにとって、頼れるパートナーとして在り続けるに違いない。今後はトート型も販売が予定されおり、ファッションに応じた選択肢も増えていくようだ。

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