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平成ギャル、安室奈美恵、そして母から娘へ——「ESPERANZA(エスペランサ)」が足元に灯し続ける“希望”の光
自由な自己表現を謳歌する“ギャル”たちがストリートを席巻した、1995年から2000年代前半。彼女たちの足元には欠かせなかった相棒こそ、カルチャーの象徴でもあった「厚底靴」だ。
その熱狂の渦中で、時代のリアルに寄り添い、ポジティブな魅力に満ちたデザインを生み出し続けたシューズブランド、それが「ESPERANZA(エスペランサ)」。平成、そして令和と、世代を超えて共感を集めるその魅力は、今も色褪せることがない。
なぜESPERANZAは愛され続けるのか。その魅力の源泉と未来を探るべく、広報の藤原健吾さん、そして販売の最前線に立つ前田野香さんに、創業者の哲学からZ世代とのコミュニケーションまで、ブランドに込められ想いを語ってもらった。
「希望」を足元に宿す、ESPERANZAの名に込めた想い
ESPERANZAと聞いて、真っ先にSHIBUYA109を思い浮かべる人は少なくないだろう。それほどまでに、このブランドは平成ギャルの足元を象徴する存在として、ストリートカルチャーに深く根を下ろしてきた。だが、その歴史は思いのほか長い。ESPERANZAは、今年で創業77周年を迎える「神戸レザークロス株式会社」を母体として誕生したブランドだ。当初は靴・履物の製造および卸売業を主な事業としていたが、1966年には小売り事業の第1号店となる「銀座エスペランサ」を出店。これが現在のESPERANZAブランドのはじまりである。

「当時は高度経済成長期で新しい価値観やライフスタイルが社会に広がるなか、ウーマンリブ運動なども台頭し、女性の地位向上が進んだ時代だったはずです。
そうした社会的変化に伴い、女性たちが自由に、そして自信を持って社会に出ていくための“足元”を支えるという意味で、ESPERANZAは単なるシューズブランドではなく、社会的な価値を提供してきたという自負を先輩社員たちは持っていたのだと思います」(藤原さん)
美しい港町・神戸に生まれ、長年にわたり女性の足元から「今」の空気を発信してきたESPERANZA。スペイン語で“希望”を意味するその名には、「女性が前向きに、自分らしく歩みを進めるその足元に、いつもそっと寄り添いたい」という創業当初からの想いが込められている。

また、創業者が掲げたビジョンは“FUN(楽しさ)”である。「主役は女性である」という信念のもと、一歩踏み出したくなるような軽やかな靴づくりが大切にされてきた。
ESPERANZAのデザインの源泉は、日々の暮らしの中にある。通勤や通学、女子会やデートといったリアルなシーンにフィットする靴こそが、ブランドの原点なのだ。
「履き心地のよさとデザイン性を兼ね備えた『ラク盛り』シリーズはその象徴でもあります。高ヒールながら驚くほどラクに歩けて、同時に足が綺麗に見えるように履ける“盛れる”靴として愛用して頂きたいという狙いがあります。最近では、ライブや推し活などのシーンにぴったりな『キュンフィットスニーカー』も人気です。靴のプロフェッショナルたちが集結した開発チームにより、細部にまでこだわった設計が実現されているのが特徴です」(藤原さん)
安室奈美恵が火付け役。社会現象となった“厚底”ブーム
1990年代半ばから2000年代初頭、厚底シューズの先駆けであったESPERANZAは、ギャルカルチャーとともに時代を席巻した。安室奈美恵や浜崎あゆみといったファッションアイコンが火付け役となり、渋谷のストリートを厚底シューズが彩ったのである。
「1990年代半ばから2000年代にかけて、ESPERANZAはギャル系ファッションとともに“厚底”ブームを牽引し、その名が広く知られるようになりました。その後、2010年頃にはギャル文化が徐々に落ち着きを見せ、ファッショントレンドもフェミニン系やモード系へと移り変わっていきます。
さらに2020年代に入ると、快適さを重視する傾向が強まり、ESPERANZAは創業当初よりも更に機能性を追求することで現代の女性たちに寄り添うブランドへと進化を遂げました」(藤原さん)
「1990年代半ばは、SHIBUYA109全体が盛り上がっていた時期でしたが、中でも安室奈美恵さんがESPERANZAの厚底ブーツを履いてくださった影響は非常に大きかったです。
当時、弊社には自社の革工場があり、そこで製作した13センチヒールの黒い厚底ロングブーツを安室さんが着用されたことで、一気に注目を集めました。その後、ストレッチ素材のロングブーツがトレンドとなり、そちらも着用してくださったことで、非常によく売れましたね」(前田さん)

時代を象徴するスターの影響もあり、ブランドは大きな飛躍を遂げた。そして、トレンドの変遷とともに、ESPERANZAは世代を超えて愛されるブランドへと成長していく。その理由を前田さんは「お客様との関係」にあると語る。
「Z世代の方々の中には、『お母さんが昔履いていたブランド』としてESPERANZAを認識している方も多く、店頭では親子で一緒にお買い物を楽しむ姿もよく見られます。お客様の青春時代の思い出とともに、品質への信頼や安心感も、変わらず受け継がれているのではないでしょうか」(前田さん)

一足にかける時間と情熱
ESPERANZAの靴づくりは、約10ヶ月という長い期間をかけて丁寧に行われる。デザイン起こしから木型づくり、素材選定、ヒールの設計まで、多くの工程が一つひとつ手作業で進められていく。素材選びから製造工程のすべてに一切の妥協はなく、見えない部分にまで配慮が行き届いているからこそ、履いた瞬間にわかる“違い”が生まれるのだ。

こうした靴づくりを支えているのが、プロフェッショナルな専門チームである。
「ESPERANZAのチームは、靴づくりのプロフェッショナルが集まっています。たとえば、木型(ラスト)を一からつくるモデリストや、生地や柄を考えるデザイナー、ヒールやソールの設計をする専門スタッフがいます。
さらに、店頭でお客様に寄り添う販売スタッフや、永続的に社会に価値を提供できるような仕組み作りするマーケターも欠かせません。企画から製造、販売までを一貫して行える体制があるので、それぞれの専門性を生かしながら、ESPERANZAらしい靴づくりができているところが大きな強みだと思います」(藤原さん)
このチーム体制があるからこそ、ブランドの代名詞である厚底シューズも、単なる流行のデザインで終わることはない。
「『ESPERANZA=厚底』というイメージは、長年にわたり培ってきたスタイル提案と、時代の空気を捉えたデザインが多くのお客様に支持されてきた結果だと考えています。デザイン企画者にとって、ESPERANZAの厚底は単なるボリューム感を演出するだけのものではなく、常に進化を続けるプラットフォームとして、アッパーデザインを支える確かな“土台”となっています。
トレンドに寄り添いながらも、全体のシルエットに調和するよう、アッパーと底周りのバランスにこだわって企画・開発を行っているデザイン企画チームには全社が信頼を寄せています」(藤原さん)


今後のコレクションでは、「フェミニン×ヴィンテージ」「マリン×ロマンティック」など、シーズンごとに新しい世界観を展開予定だ。厚底だけではなく、日常のあらゆる瞬間に寄り添う靴を提案し、長く愛されるブランドから、次のトレンドを創るブランドへ。その進化は止まらない。
誰かに会いたくなる日。コーディネートを少しだけ特別にしたい日。なんでもない日常に、ささやかなトキメキが欲しい日。ESPERANZAは、そんな毎日に寄り添う一足を通じて、女性たちの足元に希望の光を灯し続けるのである。
PROFILE
前田 野香(まえだ のか)
ESPERANZA(エスペランサ)を運営する神戸レーザークロス株式会社に30年ほど勤務しバブル景気〜Y2K時代の栄枯盛衰を知る古参社員。
PROFILE
藤原 健吾(ふじわらけんご)
アパレル業界は神戸レーザークロス株式会社が初の職務経験だが顧客に寄り添い自社の価値を言語化し続ける職業人。
Text by Tajimax















