

Articles
「Mountain Hardwear(マウンテン ハードウェア)」過酷な環境下での行動を支えるアイテムとともにブランドのルーツに迫る
エベレストなど、8,000mを超える過酷な山域での行動を可能にする高品質で耐久性のあるウエアやエキップメントで定評のある「Mountain Hardwear(マウンテン ハードウェア)」。
そのもの作りの歴史をたどっていくと、同ブランドがさまざまなアイテムのパイオニアであったことがわかる。今回は株式会社コロンビアスポーツウェアジャパンの本田 真琴さんにアイテムを紹介してもらいながら、Mountain Hardwearのルーツを紐解いていきたい。
1993年のハロウィンの日に誕生したMountain Hardwear
「Mountain Hardwearは、1993年のハロウィンの日にアメリカ・カリフォルニア州バークレーで誕生したブランドです。1990年代というと、登山がより大衆化していった時代でもあります。エベレストが一般公募で登れるようになったのもこの頃で、それまでは冒険家たちだけが未踏の地を切り開いていた時代でした。ルートが確立されていくにつれ、登山経験のある一般の人々が憧れの地としてエベレストを目指すようになります。そんな時代背景の中でMountain Hardwearは生まれました」

「当時『SIERRA DESIGNS(シエラデザインズ)』で社長を務めていたジャック・ギルバート氏は、副社長のポール・クリーマー氏をはじめとする同社の仲間たちとともに会社を離れます。エベレストをはじめとする8000m級の過酷な山々で、本当に使えるアイテムを創るブランドになろうと決意し、1993年のハロウィンの夜Mountain Hardwearがスタートします。
ブランド名のMountain Hardwearは、もともと実在していた工具を扱うお店『American Hardwear(アメリカン ハードウェア)』にちなんで名付けられました。
ブランドの象徴である『ナットマーク』は、その由来を反映し、“耐久性”や“タフさ”といったMountain Hardwearの製品哲学を体現しています。過酷な環境に耐えうるギアを生み出すというブランドの姿勢が、このネーミングとロゴにしっかりと込められているのです」


創業当初から「GORE-TEX(ゴアテックス)」を多用したものづくり
こうしてブランドがスタートしたMountain Hardwearだが、どんなものづくりからはじめたのだろうか。最初のアイテムから紹介してもらおう。「創業当初から、現在の『W.L. Gore & Associates』社(旧・GORE-TEX社)とは良好な関係を築いており、防水性・耐久性・透湿性・防風性を兼ね備えたGORE-TEX特有の3層構造素材を活用した製品開発が行われてきました。
その代表的なアイテムが、『Exposure™ GORE-TEX Parka(エクスポージャー ゴアテックス パーカー)』です。ブランド設立からわずか3ヶ月で開発し、アメリカの大規模なアウトドア展示会『Outdoor Retailer Show(アウトドア リテーラー ショー)』にて発表され、大きな注目を集めます。このスピードで開発ができたのもSIERRA DESIGNS時代の豊富な経験が物語っていたとも言われています。
ブランド初期に発売されたExposure™ GORE-TEX Parkaは、2023年に一度復刻されましたが、後継モデルはなく、語り継がれる名作アウターとなっています。その後もGORE-TEX社とは継続的にパートナーシップを築いており、最新のGORE-TEX素材を使用したアイテムは時代を問わずリリースされています。
現在では、環境配慮型の『ePE メンブレン[1](イーピー メンブレン)』を採用した『TrailVerse GORE-TEX Jacket(トレイルバース ゴアテックス ジャケット)』というアイテムが展開されています」


「さらに1996年には、GORE-TEX社と共同で開発し、特許も取得している『Windstopper® Tech Jacket(ウィンドストッパー テック ジャケット)』というフリースジャケットをリリースしました。
フリースは編み物のため風を通しやすいのですが、このジャケットにはGORE-TEXの防風透湿メンブレンが貼られており、防風性能が大幅に向上。当時のフリースの概念を変えたといわれる革新的なアイテムです。こちらも後継モデルはなく、2023年に復刻されましたが、ブランドの歴史を語るうえで重要なアイテムになっています」


エベレストベースキャンプなど、極地での環境下でもたえうるテント「Space Station™ Dome Tent(スペース ステーション ドームテント)」
ここで、ウエア以外にもMountain Hardwearが作った代表的なアイテムを紹介したい。それが「Space Station™ Dome Tent(スペースステーションドームテント)」という極地用ドーム型テントだ。このアイテムについてもお話を伺っていこう。「このアイテムも、ブランドの歴史を語るうえで避けては通れない、代表的な存在だといえます。1997年に特許を取得した大型のドーム型テントで、18人での使用が可能です。エベレストの雨風など過酷な環境にも耐えられるよう開発されました。
日本国内では、スペースの制約や設営の難しさから、実際にこのテントが張られている光景を見る機会は少ないかもしれませんが、ヒマラヤなどの極地に目を向けると、ベースキャンプの中心に堂々と構えるスペースステーションの姿を数多く目にすることができます。
世界中の登山家たちに今でも選ばれている信頼性の高いモデルでエベレストベースキャンプなど極地でのアイコン的存在としても愛されてきた製品です」


軽量ダウンのパイオニアもMountain Hardwearだった
さらに、アウトドアブランドには欠かせないアイテムのひとつとして、軽量ダウンがある。現在ではさまざまなブランドからリリースされている軽量ダウンだが、Mountain Hardwearはこれについても2000年代初頭にはすでにリリースしていたという。「ゴーストのように軽いダウンジャケットという意味で、『Ghost Whisperer™(ゴーストウィスパラー)』という名前で近年販売されているアイテムですが、2000年代初頭には、『Nitrous Down Jacket(ニトラス ダウン ジャケット)』という名称でリリースされていました。軽量ダウンジャケットは現在では多くありますが、このアイテムがリリースされた頃はまだ類を見ないものでした。
当時、このジャケットを作るために必要な、軽さや性能を満たした15デニールという細い糸を使用した非常に薄いナイロン素材は、日本のメーカーにしか製造できなかったため、日本製のナイロンを使用して作られていました。
近年では素材もどんどん進歩し、さらに細い10デニールのナイロン素材が使われるようになりました。中に使用している羽毛は800フィルパワー[2]のRDS認証ダウン[3]を採用しています。
パッカブルでコンパクトに収納でき、驚くほどの軽さに仕上げられたこのアイテムは、Mountain Hardwearのベストセラーとなっています」
パッカブルでコンパクトに収納でき、驚くほどの軽さに仕上げられたこのアイテムは、Mountain Hardwearのベストセラーとなっています」


Everything is Equipment(すべてが装備品である)
クオリティが高く、本物志向にこだわり、自分たちが納得できるものを作ろうとはじまったMountain Hardwearは、歴史の中で優れたアイテムをリリースしてきた。スタッフはもちろん、アスリートや登山・山岳ガイドと製品テストを行い、縫製チームに至るまで開発に携わるあらゆる人からのフィードバックとリアルな情報をもとに、長く愛用できる製品づくりを目指してきた、創業当初からのスタイルはいまもなおブランドの根幹として根付いている。
1993年の創業以来、「Everything is Equipment(すべてが装備品である)」という製品開発の理念や「SEEK WILDER PATHS(より険しい道を探す)」というスローガンに変わりはなく、これからも多くの人のチャレンジをサポートするブランドであり続けたいと考えているという。


[1]メンブレンとは、3層構造のような機能性ナイロン素材の生地と生地の間に入る膜状の素材。水滴の浸入を防ぎつつ、水蒸気は外に排出してくれるという性能を持つ。
[2]フィルパワーとは、羽毛のかさ高性を表す単位であり、数値が大きいほど空気を多く含むため、保温性に優れた良質なダウンといえる。フィルパワーが大きいと、少ない量のダウンでかさ高いダウンを作ることができるため、軽いウエアとなる。
[3]RDS認証ダウンとは、羽毛製品のサプライチェーンにおいての動物福祉を保証する国際認証基準を満たしたダウン。生きた鳥からの羽毛採取や強制給餌など、動物に不当な扱いをしていないことを、トレーサビリティシステムを通して保証するもので、RDSはResponsible Down Standard (レスポンシブル ダウン スタンダード)の略となっている。
PROFILE

本田 真琴(ほんだ まこと)
株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン
マーケティング部 ブランドマーケティング課
北海道出身。大学在学時に環境経済学を専攻し、その研究がきっかけで山の美しさに魅了され登山をはじめる。現在はトレイルランニングや縦走登山など幅広くアウトドアに親しみながらコロンビアブランドのプロモーションなどマーケティング活動全般を行っている






















