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汗、日差し、暑さ…夏の課題を一枚で解決:ホッキョクグマに学んだ高機能素材「SHELTECH」

2025.08.08
酷暑の夏を乗り切るため、各社はこぞって機能性繊維を開発し、私たちの生活を快適にしてくれている。そうしたなかで、ホッキョクグマからヒントを得て、開発された素材がある。それが、皿海衣料株式会社の「SHELTECH(シェルテック)」だ。
「太陽と遊ぶ」というキャッチフレーズを持つ同社の機能性素材は、まるでどんな暑さでもかかってこいと挑戦しているかのようだ。はたしてどのような繊維なのだろうか。同社の別所智康さんにお話を伺った。

PROFILE

別所 智康(べっしょ ともやす)

皿海衣料株式会社 SHELTECH事業部

日常で着る洋服に機能性を

皿海衣料株式会社の創業は1963年のこと。デニムを中心に、カジュアル商品のODM・OEMによる製造・輸出入や販売を行ってきた。その同社が満を持して発表したのが、「SHELTECH」という機能性素材だ。どういう経緯で開発に着手したのだろうか。 
「最初は、機能素材を使ってデニムを作れないかというところから始まりました。暑くなると、どうしてもデニムは敬遠されますから。
特に、今後温暖化が進んでいくことが予想されるので、『SHELTECH』を使って少しでも社会貢献できたらいいなというのが、開発のコンセプトになります」 

始まりはホッキョクグマ

そうした思いから、2015年に開発が始まった。最初は取引のある糸屋から、新たな糸ができたという連絡があったという。
「中空糸に翡翠とセラミックスを練り込んだ糸を開発したというお話をいただきました。鍵となる中空糸は、ホッキョクグマから着想を得たと聞いています。
ホッキョクグマの体毛は中空構造になっており、それをどうにか再現したいというところから始まったそうです。そこに、冷却効果のある翡翠やセラミックスを混ぜ込んだら涼しくなるんじゃないかということで、今の形になりました」
中空糸と翡翠・セラミックスの融合により、高い機能性を発揮
ホッキョクグマをヒントにし、しかも翡翠を使うというのは唯一無二の素材ではないだろうか。こうした話が得られたのも、国内外での販売を手掛けている同社だからこそ可能だったものだろう。
発想自体が画期的でも、実際にそれを再現するには技術が欠かせない。今回の開発で難しかった点はどこにあるのか。
「中空糸に鉱物を練り込む作業が難点でした。均一にならなかったり、糸の強度が確保できなかったり。ですが、これは工場が『SHELTECH』のためだけに機械を開発し、現在は特許技術を獲得した独自の機体を使うことで克服しました」

太陽と遊ぶための5つの機能

こうして出来上がった「SHELTECH」は、遮熱、接触冷感、吸水速乾、軽量、紫外線防止という5つの機能を有しているという。これだけの機能があると、それぞれの効果が本当に発現しているのか気になるところだ。 
「『SHELTECH』の素材と一般素材をサーモグラフィを使って比較してみると、その差は一目瞭然です。体感温度でいうと、3〜5度は変わってくるのではないでしょうか。また弊社には、ムレにくさを測定する機械もあるのですが、こちらもしっかりと効果が確認されています」
第三者機関と自社による測定から、しっかりとその効果は立証されている。もともと中空糸で翡翠やセラミックスといった冷却機能を謳う素材だったが、結果として軽量性や紫外線防止の機能も得られたようだ。
「中空糸という構造上、穴が開いているので軽くなることは予想できました。実際に測定すると、通常の綿100%の衣類と比較すると、8%ほど軽量化が達成されています。また、紫外線についてもさまざまな機能検査をするなかで、その遮蔽率の高さがわかってきました」
「SHELTECH」を使用したものは、その冷却性能の高さがはっきりと現れる
その多機能素材である「SHELTECH」は、日常の服を作りたいというコンセプトのもと、Tシャツやパンツといったベーシックなアイテムに使われている。興味深いのは、いずれのアイテムも「SHELTECH」を100%使っているわけではないということだろう。
「たとえば、Tシャツですと『SHELTECH』の糸は、30%くらいしか使用していません。あくまでも日常服でありたいので、表地は通常の綿などを使用し、裏地に『SHELTECH』の糸を使って編み込んでいます」 
もちろん、「SHELTECH」100%で製作することも可能だが、それは同社が目指す場所ではないという。どんなに機能的であっても見た目は日常服という、確固たる軸があるからこその戦略なのだ。
見た目は一般的な 通常のTシャツと変わりない。「"LOGO" Tシャツ(WHITE)」5,390円(税込)

「SHELTECH」への期待

同社の「SHELTECH」は、この夏場において必須の機能を持つ素材だとわかった。ゆえに、その需要はどんどん高まっていくことが予想される。今後は、どのような展開を予定しているのか。
「今“SHELTECH”はファッション業界で広まっています。本当のところは、機能としての“SHELTECH”を見てもらいたいほしいと願っています。それが今後の課題ですね」
ファッションとしての「SHELTECH」ではなく、機能としての「SHELTECH」。この真意はどこにあるのか。
 「ファッションの領域に限定されると、本来別のところで使えたはずなのに、そこに届かないというもどかしさがあります。そこを変えていきたい。一時的にファッション界で爆発的なヒット商品を生み出すよりも、社会のインフラになるような素材として、当たり前に使われるようになるよう、活動を続けていきます」
ホッキョクグマの体毛から始まった小さな着想は、今や私たち人間が過酷な太陽と”遊ぶ”ための、頼もしいパートナーとなった。「最悪、名前が出なくてもいい」という別所さんの言葉の裏には、ブランド名よりも機能そのものが社会に浸透してほしいという切実な願いがある。その機能が当たり前になる日を、作り手は静かに見据えている。

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