JA/EN

AI検索

関連ハッシュタグ

Articles

傘ソムリエの土屋さんに聞く、晴雨兼用傘の正しい選び方と機能の見極め術

2025.06.19
晴雨兼用傘のニーズが高まっている。これから迎える梅雨の雨傘需要に加え、夏の酷暑や春・秋の強い日差しへの対策として、年間を通じて傘の出番が増えているからだ。
では、数ある晴雨兼用傘のなかから、自分に合う一本をどう選べばいいのか。性能、見た目、価格――何を重視すべきか迷う人も多いだろう。
そこで話を聞いたのは、“傘の魅力を広く伝える傘ソムリエ”としてメディアでも注目される土屋博勇喜さん。傘に惚れ込み、これまでに250本以上を自腹でコレクションしてきた人物で、自ら雨風のなかで性能テストを行うなど、妥協なき傘の目利きとして知られている。そんな土屋さんに、選ぶべき一本の見極め方を教えてもらった。

PROFILE

土屋 博勇喜(つちや ひろゆき)

22歳から大手ホームセンターでレイングッズを担当。様々なメーカーの傘に触れ、つくり手のこだわりや機能性、美しいフォルムに魅了され傘の虜となる。2019年、株式会社シューズセレクション(現ウォーターフロント)へ入社し、仕入れ・売り場作りの責任者に。傘の魅力を広く伝える世界初の「傘ソムリエ」として活動を行う。

本当に“日差しから守る傘”を見分ける基準とは

まず最新の晴雨兼用傘の基本スペックを教えてください。
UVカット率が99.9%以上で、遮光率も99.99%以上というのが標準化されています。そこに遮熱と撥水機能がつきますね。
100%という表示を見かけることもありますが。
それは、あくまでも傘になる前の生地性能の検査値です。傘には縫い目があるため、製品として仕上がったものはどうしても100%にはなりません。「遮光率100%生地使用」や、「生地単体の検査であって傘本体の性能数値ではありません」というような注意事項が載っているはずです。
ごく稀にUVカット率だけ90%以上で、遮光について触れられていない傘もあるので、必ずUVカットと遮光の両方がしっかりと明記されたものを選んでください。数値が書かれた下げ札が必ず商品に付いているはずです。
太陽、雨、風への対策をしたウォーターフロントの全天候型の傘「ZENTENKOU」シリーズ
表示以外での見極め方はあるんでしょうか?
明確な方法があります。まず、傘を差した際に光が入るか入らないかということ。雨傘は、開くと裏面に少し透け感があると思います。晴雨兼用傘は開くと真っ暗です。裏にPU(ポリウレタン)コーティングがしてあると、UVカット率も遮光率も99%以上の性能が出ます。
年々、技術革新は進んでいるんでしょうか?
UVカット、遮光、遮熱、撥水の各水準が上がってきています。今までの晴雨兼用傘は、UVカットや遮光にはすごくフォーカスしていたものの、遮熱や撥水に対してはそこまででした。猛暑と言われている昨今、遮熱技術がすごく進んできています。
風の強い日は傘を差すのが大変ですが、耐風性はどう選べばいいですか?
傘の風の逃がし方には2つあります。風であおられた際に骨がひっくり返っても耐える耐風骨。そして傘の生地が2重構造になっていて、その2重構造の生地の隙間から風を逃がすダブルキャノピー型です。
ゴルフのプレー中など骨がひっくり返ると危ない場面や、そり返った結果ぬれたくない場合は、ダブルキャノピーの傘がおすすめです。しかし生地が2重になっているため、折りたたみ傘の場合たたみづらく、重量も増える傾向にあることは覚えておいたほうがいいでしょう。
ウォーターフロントが開発した最高水準の日傘である「COKAGE+」には耐風タイプもある

店頭で必ず試したい傘チェックポイント

晴雨兼用傘について一通り教えてもらったところで、お店での商品選びのチェックポイントを教えてください。
まずは傘のサイズ感。自分の身体とぴったりのサイズが良いのか、もしくは荷物まで雨から守りたいかによって変わります。
次に、持ったときの感じ方です。ラフに持てるのか、長時間持つと重いと感じるのか。
最後は開閉のしやすさです。傘は手作りの工程が含まれているため、一本一本に個体差が出るんですね。そのため傘を開閉してみて、違和感がないかを確認します。
「ラフに持てる」というのは具体的には?
持った瞬間に握りやすいとか、しっくりくる感じ。たとえば、僕は手が大きいので、小さなハンドルの傘を持つと握りづらいんです。握りづらいと風が吹いたとき安定して持つことができません。傘は差すことが第一なのに、耐えることに必死になって、風にあおられて傘が壊れることもあります。
握りづらいと使わなくなり、いくら高い傘を買っても愛着がなくなって、次から次へと傘選びが迷走してしまいます。
自動開閉に加え、傘生地の裏にパネルを取り付けて折りたたみ傘をたたみやすくした「クイックシャット」シリーズ
同じメーカーの同じ型の傘でも個体差は出るものですか?
すべて同じ仕上がりで製造されていることが理想ですが、傘の製造は手作業が多いため同じ型の傘が5本あったとしたら、5本それぞれに縫製などの個体差が出ることもあります。人によっては握り方の癖もあり、その癖と個体差の相性が合わないことがあります。
そうすると、売り場では購入する前に必ず傘は自分で開いた方がいいですね。これらを踏まえて理想的な傘とはどんな傘でしょう?
僕の理想像としては、ほどよい大きさで、ある程度軽くて風に強い傘です。「軽い」は正義ではあるのですが、軽すぎるのは危ないなとも思っているんです。軽すぎてしまうと風にあおられてしまうので。
晴雨兼用傘の価格帯は一般的にどれくらいですか?
2,000円後半から3,000円後半が大体のレンジです。たとえば5,000円を出すと良いものは買えるんですけど、それはどんな機能をより求めるかになります。
耐風、遮熱、撥水、または骨がカーボン素材で軽くなっているとか、自動開閉機能の有無など。その点ではスマホなどのガジェットに似ていますね。
1本数万円の傘もあります。高ければ高いほど性能が良いということでしょうか?
そうとは限らないです。最近では企業努力で低価格かつ機能が充実しているものもあります。 高級傘については、絵を買うような感じだと思ってください。
たとえばイギリスの「フォックスアンブレラズ」というブランドの傘は、僕が購入したときは当時のレートで1本3万円くらいして、今では6、7万円。もっと高い傘もありますが、こういった傘は日用品ではなく美術品を買う感覚ですね。
クイックシャットに日傘機能を搭載した晴雨兼用の「クイックシャットライト UVブロック 折 55cm」
メーカーによる性能の違いはありますか?
耐風仕様に関しては、じつは各社の差がなくなってきています。
かつてはニュージーランドの「ブラント」、オランダの「センズアンブレラ」という2強がいました。両社が強かったのは、いずれも風が強い国だからです。
しかし各社技術が発達してきて、お客様にとっての選択肢はとても増えました。メーカーにとってはプレッシャーがかかってきますよね。

なぜ海外でも人気? “日本の傘”が世界に受け入れられる理由

国による傘の違いの話題が出ましたが、傘は日本が得意そうですね。
そうですね。日本は傘自体の需要が高く、雨の日に服をぬらしたくない人が多いため、傘の機能として撥水性を大事にします。また、同時に日差しも遮ることができる機能を持つ晴雨兼用傘が増えています。
一方でニュージーランド・オランダなどでは風に対してはすごくフォーカスするものの、日差しを遮ることについては意識してませんし、撥水性も二の次といった感じです。雨についてもある程度しのげればよく、少しの雨であればフードを被ればいいという文化です。
(機能性の違いが認められ)海外ブランドが日本の代理店を通して日本向けに企画した商品が、本国に逆輸入されて売れるケースもありますね。
バッグへ入れても邪魔にならないフラット型の「ポケフラット」シリーズ
日本を訪れる外国人の間でも晴雨兼用傘が売れているそうです。購入するのはやはりアジアの人が中心ですか?
ヨーロッパの方も増えています。日本の夏が暑すぎるんだと思います。中国製など日本国内で製造されていない傘であっても、日本メーカーが企画製造しているものならクオリティにこだわっているため、安心感から購入する方は多いようです。
インバウンドの人々は、以前はUVカットだけついていればいいという感じだったのですが、最近はUVカットだけでなく、遮光や遮熱も求めています。UVカットも99%オーバーを望んでいます。
海外やイギリスの傘の話が出ましたが、傘好きの土屋さんにとってイギリスはやはり憧れの地ですか?
そうですね。あとドイツです。ドイツは初めて折りたたみ傘を作った国だからです。折りたたみ傘は1928年3月16日が誕生日。特許が取得された日です。
UVカット、遮光、遮熱といった機能に加えてデザイン面でも選択肢が豊富な「COKAGE+」
そんな傘の一番の魅力はどこだと思いますか?
やはりシルエットですね。たぶん今まで人間が関わっているもので、ここまで形が変わらないものってないんじゃないかなというくらい完璧な形だと思うんです。
一方で傘には不完全さもあります。軽い傘を求めてしまうと強度が不安ですし、撥水性能を強く求めてしまうと生地がデリケートになる。機能のどこかに欠点があるというところが、人間らしさを感じて大好きなんです。
最後に、土屋さんにとって傘はどんな存在ですか?
身近なものでありながら、とても大切な存在ですね。恋人のように、いつもそばにいるからこそ、そのありがたみを忘れてしまいがちですが、傘も同じで、“いてくれて当たり前”ではないんですよね。日々の暮らしのなかで、もっと傘を大切にしてもらえたらうれしいです。

Text by 守隨 亨延

Tags

この記事はいかがでしたか?

シェアリンクをコピーしました

Related Articles

Related Database